簿記3級でつまづきやすい経過勘定についてわかりやすく説明していきます。
特に、経過勘定をふわっとしか理解できていない方や、
作業的に仕訳を覚えてしまっている方は理解が深まり、迷わずサクサク問題を解けるようになります!
試験前最速要点チェック
- ”毎期”ときたら再振替仕訳を考慮
- 試算表の数値は決算整理仕訳前=試算表は再振替仕訳と期中仕訳は考慮済
- (だから1月あたりの費用収益を計算する際に分母が12ヵ月以上になる)
- 前払前受か未払未収かは現金のやりとりが当期にあったか否か
【随時追加】勉強や作業が捗るオススメのアイテム&サービス10選
続きを見る
タップで開ける目次
そもそも経過勘定はなぜつまづきやすいのか?
主な理由は3つです。
- 日常生活ではあまり出てこない考え方
- (会計)期をまたぐ
- 開始仕訳としてしれっと現れたりする
❶日常生活ではサービスの受け取りとその対価としての支払いが同じタイミングであることが大半です。
例えばペンを現金で買ったとすると、
消耗品費 xxx /現金 xxx
となりますよね。
一方この経過勘定の考え方は、
現金を支払っていないけれど、サービスなどをすでに受けていて、払う義務のみ発生している状態など、
必ずしも現金のやりとりがあるわけではない点でイメージが湧きにくいのです。
❷また、そもそもこの経過勘定は、費用や収益を適切な会計期間に計上することが目的になりますので、
一会計期間(例えば、XX年度期のみ)で完結しない点で、多くの方が抵抗を感じます。
❸決算整理仕訳で経過勘定を立てたら、次期期首に再振替仕訳が入ります。
こちらも、適切な会計期間に収益や費用を計上することが目的なのですが、
これを推定させるような問題が多いため、ややこしく感じる主な要因となっています。
では、早速これらのつまづきやすい点を解消していきましょう!
経過勘定はなんのために必要なのか?
経過勘定が必要な理由は、
実際に取引(入金や出金等)が行われるタイミングと、費用収益を計上させるべきタイミングにズレが起こることがあるためです。
この費用収益を計上させるべきタイミングという理解が経過勘定を考える上で、もっとも重要な概念です。
本記事の前提
解説のため、本記事での決算期は全て4/1~3/31の年度期とします。
経過勘定を理解しよう【未払費用&未収収益編】
未払費用および未収収益は、
のことです。
賃料のケースで考えてみましょう。
例題
とある会社が事務所を1月1日に移転し、大家さんの計らいで家賃は半年後の6/30日に支払えば良いことになった。
決算整理仕訳によって未払家賃を計上する際の仕訳はこうですよね。
支払賃料 xxx / 未払賃料 xxx
現金をまだ払っていないけれど、3ヶ月分はすでに利用しているので利用した部分の費用を、まだ払っていないということを明示するために未払賃料という負債として計上する。
という意味を持っています。
上記は会社側の処理ですが、大家さん側の処理は以下になります。
未収賃料 xxx / 受取賃料 xxx
考え方は会社側と同じで、現金はまだ受け取っていないけれど、3ヶ月分サービスを提供(部屋を貸している)ので、
その収益をまだ受け取っていないが受け取る権利があることを明示するために未収賃料という、資産として計上しています。
経過勘定を理解しよう【前払費用&前受収益編】
前払費用と前受収益は、
現金の受け払いをもうしているけれど、当期の費用もしくは収益ではないため調整
する勘定です。
これはいい例があります。AmazonPrime契約されている方結構多いですよね。
Amazonプライムは特典がすごい!メリットを徹底解説!
続きを見る
例題
とある会社は、1/1にAmazonPrimeの年会員(4,900円/年)の契約を結び(当日からサービスの利用可能)、翌月クレジットカードで全額支払った。
上記の仕訳は、
会費 4,900 / 現預金 4,900
となりますね。これが前提(期中仕訳)となり、これを調整する形で決算整理仕訳を行います。。
上記のようにすでに当期に現金等の支払いはありますが、年間の契約なので次期に残り9ヶ月分サービスを受けることができます。
そのため、会費の支払いのうち9ヶ月分は当期に属さない費用と考えます。
そのため前払費用という資産科目でその事実を明示します。
前払会費 3,675 / 会費 3,675
これで、当期に費用として計上される額は、4,900-3,675=1,225となり費用を適切な期間に分配できました。
反対にamazon側の処理は以下のようになります。
役務収益 3,675 / 前受収益 3,675
amazon側は、すでに現金等は受け取っていますが、9ヶ月分サービスを利用者に提供する義務があるので、その部分について負債として計上し、現金等受領時に計上した収益(年間分)を9ヵ月分相殺する形で調整しています。
注意
"カードで決済"でこんがらがった方へ
当該経過勘定の目的はあくまで費用と収益の期間を調整することにあります。
現金のやりとりと費用収益の計上タイミングのこの2つを混同しないようにしましょう。
試験によく出る要注意ワード”毎期”
これに悩まされてる方が多い印象ですね。
毎期ときたら開始仕訳を考慮する必要があると覚えてOKです。
では、"毎期"がつく経過勘定の問題を理解するための前提知識を再度確認しましょう。
試算表に載ってくる数値の範囲の確認
決算整理仕訳前残高試算表に載っている数値は何が考慮済かしっかりと把握されていますか?
そもそも会計期間内に発生する仕訳の大まかな種類として
- (期首)再振替仕訳(あれば)
- 期中仕訳
- 決算整理仕訳
の3つがあります。
決算整理仕訳前と言っているぐらいですので、試算表に載ってくるのはこのうち❶と❷になります。
だから試算表に載ってくる数値が12ヵ月分以上になり得ます!
前受収益および前払費用の場合、この再振替仕訳を考慮した結果
試算表に載ってくる費用または収益が12ヵ月分以上になります。
考える順序について
では具体的な問題の解き方を見ていきましょう。
例題
受取家賃は、毎期同額を12月1日に向こう1年分として受け取っている。当期の前受分を計上しなさい。
(解答用紙試算表内:受取家賃 800,000)
この問題のいやらしい点は、
試算表にはすでに❶再振替仕訳と❷当期の受取家賃受領時の仕訳(期中仕訳)が考慮済なのですが、その明示がないことと、
期中じゃあいくらもらったのか?が明示されていないため推定する必要がある点ですよね。
このような問題は、以下のような順序で考えていきます。
- 金額ではなく期間を基準に考える
- 当期の決算整理仕訳で何ヶ月分を次期に振り替えるか考える
- ❷が前期末にも行われているのでその月数+期中受領分月数を足す
例題に当てて考えていきます。
❷12/1に向こう1年分受領しているので、当期に帰属するのは12,1,2,3の4ヶ月のみで8ヵ月分は前受家賃として次期に振替えますよね。
❸❷が前期にも行われているので期首再振替仕訳では8ヶ月分の受取家賃が当期の収益に計上されます。
❸加えて、当期にも新たに向こう12ヶ月分受け取っていますよね。
結果20ヶ月分の受取家賃が試算表に計上されていることになります。
よって、試算表の金額は800,000なので、800,000/20ヵ月=40,000=1ヵ月分の受取家賃であることが判明します。
8ヵ月分前受家賃として計上したいので、40,000✖️8=320,000が当期(および前期)の前受家賃の金額になります。
経過勘定の考え方まとめ
この記事をざっくりまとめていきます。
- 経過勘定は見慣れないから難しい
- 現金の授受と損益のタイミングのズレ
- 毎期に注意
- 実際の解く手順
この論点は、簿記3級で一番悩みやすい点かと思います。
しかし考え方さえわかれば得点源になりますよ!
少しでも参考になれば幸いです。 続きを見る
【簿記3級】商品売買は三分法を理解すればOKです【分記法は簡単】