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【簿記2級】有価証券は大枠の考え方を押さえれば簡単です。丁寧に解説します。

有価証券がよくわからない...

そんなあなたに、公認会計士受験勉強中に簿記1級まで取得した私が、

簿記2級で求められる有価証券の知識を明瞭簡潔に解説していきます。

この記事でわかること

  • 株式と債券の違い
  • 有価証券の保有目的ごとの性格
  • 債権の処理(端数利息も)
  • 売買目的有価証券の期末評価
  • 満期保有目的の債券の償却原価法
  • 子会社・関連会社株式の処理
  • その他有価証券の処理
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有価証券とは

有価証券とは一言で言うのであれば価値のある紙っぺらのイメージです。

会計上重要な有価証券は中でも、株券と債券と呼ばれる紙っぺら達になります。

株券とは、いわゆる株式会社が発行しているものであり、会社の所有権を意味します。
債券とは、不特定多数の個人や法人に対してお金を借りるときに発行する証書のことです。

(有価証券を取得する側の処理を見ますので、債券を買うということはつまり、お金を貸すことと同義になります。)

なので、明確な違いとして、株式はそれそのものが株主になる権利なので、株を買ったらそのままですが、債券の取得は貸付金のようなものなので、返済期限が設けられているという点です。

また、株式を保有していることで得られる収益を配当金と呼び、

債券を保有していることで得られる収益を利息と呼びます。

有価証券の保有目的

会計上、有価証券を保有目的ごとに分類して会計処理を定めています。

つまり単純にその有価証券をどんな目的で買ったのか?ということですね。

以下の4つに分類されます。

有価証券の4分類

  • 売買目的有価証券
  • 満期保有目的の債券
  • 子会社・関連会社株式
  • その他有価証券

売買目的有価証券

名称のとおりですね。売ったり買ったりして儲けを得るために株券や債券を買ったらこの分類になります。

ご存知の通り株式には時価がつきます。株価とも言いますね。(債券にも実は時価が付きます。そういうものなんだ、と覚えてしまってOKです。)

なので、この売買目的有価証券とは、安いときに買って、高いときに売ることで利益を得ることを目的として有価証券を買うケースを指します。

一般的な有価証券の取得のイメージはこれになるのではないでしょうか。まさにトレーダーというイメージですね。

なので売買目的有価証券の性格は、

すぐ売る

という性格になります。

満期保有目的の債券

こちらも名称の通りなのですが、着目していただきたい点として、満期保有目的有価証券とは呼ばない点ですね。

なぜならば、こちらには株式が含まれないからです。冒頭で解説したとおり、債券は貸付金のようなものなので、満期がありますが、株式には満期は存在しない(会社の所有権)ため、債券のみが想定されています。

なので満期保有目的の債券の性格は、

売らないで満期まで持っとく債券

という性格になります。つまり利息と元本の返済のみを得ることを目的としているわけですね。

子会社株式・関連会社株式

こちらは馴染みがない方には違和感があるものですね。こちらも先程の着目点と同様に、株式と言い切っている点は1つのポイントですね。債券は想定されません。

なぜならば、株式といういわゆる会社の所有権を一定の水準以上もつことで、その株式を保有した会社に対して影響力を及ぼすことが目的だからです。

なので、子会社株式・関連会社株式の性格は、

会社を支配もしくは影響を及ぼすためにもつ株式

という性格になります。

その他有価証券

こちらも名称通りなのですが、上記で上げた3つの保有区分に含まれない有価証券がこちらに含まれます。

そのため当然株式も債券も両方とも存在します。ありとあらゆる目的での有価証券が想定されますが、日商簿記試験の受験上は以下の性格で考えればOKです。

すぐには売らないんだけれども、いつかは売る有価証券

 

以上、有価証券の4つの保有目的と有価証券の種類をまとめると以下のようになります。

有価証券の4分類株式債券
売買目的
満期保有目的
子会社等
その他

有価証券全般の会計処理

まず、4つの保有区分に共通する、全般的な会計処理から見ていきましょう。

有価証券の取得

有価証券を取得した際にかかる、購入手数料などの付随費用は、取得原価に含めてあげる必要があります。

例題

当社は、株式を9,900円で取得した。なお、当該取得時に手数料を証券会社に100円支払っている。

このような例題の場合、仕訳としては以下のようになります。

株式にかかる受取配当金の処理

配当基準日と呼ばれる一定の日に株式を保有している人は、配当金を受け取ることができます。

配当金とは言うならば、会社のあげた利益を、株主に一部分配するようなことを指します。

仕訳としては単純に以下のようになります。

債券にかかる利息(クーポン利息)の処理

債券にはこんな感じでクーポン(利札)利息がそもそもついています。

この右についている1つ1つがクーポンであり、それぞれ1年毎など特定の期限が到来すると換金することができるようになります。

引用元:大林組百年史 

なので、当該クーポンを換金できる様になる都度以下の仕訳を行います。

要チェック

利息は本来、日々、1秒1秒少しずつ少しずつ増えていくような、時の経過に応じて発生するものですが、クーポン利息は、1年毎にどかっと利息をもらうイメージになります。この理解が端数利息の処理の理解に繋がります。

売買目的有価証券の会計処理

それでは、保有目的別の会計処理をそれぞれタイミングごとに確認していきましょう。

売買目的有価証券の売却

売買目的有価証券の売却は一番シンプルに考えやすいです。

買ってきた金額である取得原価と、売れた金額を比較して、買ってきた金額の方が安ければ当然利益がでますね。

仕訳で見てみると一目瞭然です。

例題

当社は、売買目的で保有している取得原価10,000の株式を、10,500円で売却した。

売買目的有価証券の勘定科目は有価証券を用います。(なお、当該有価証券という勘定科目には1年内に償還される満期保有目的の債券も含みます。)

売買目的有価証券の期末評価

売買目的有価証券の性格に立ち返ってみると、

すぐ売る

というのがこの売買目的有価証券の特徴でした。

そのため、期末において"もし今売ったらいくらになるのか?"を財務諸表に示してあげる必要があります。

よって期末においては、有価証券の取得原価を時価になおしてあげる処理を行います。(時価評価)

例題

当社は、売買目的で取得した取得原価10,000円の株式を期末においても保有している。

なお、当期末における当該株式の時価は9,000円であった。

考え方としては、すでに10,000円の売買目的有価証券が計上されているはずだから、9,000円に下げなくてはならない。

つまり以下の仕訳になります。

満期保有目的の債券の会計処理

満期保有目的の債券の取得についても考え方は、有価証券全体の考え方と同じなのですが、問題文の与えられ方が特殊なのでこちらは解説を加えます。

満期保有目的の債券の取得

満期保有目的の債券の取得についても、有価証券全体の考え方と同様、購入手数料などの付随費用がもしあればそれを取得原価に加えるという点では共通なのですが、資料の与えられ方として以下のような例題の形式になります。

例題

X1年4月1日(当期首)に、満期保有する目的で、A社の発行する社債(額面50,000円:償還期間5年:利率年2%)を額面100円につき95円で購入した。

このように、社債の額面金額(社債券の表面に書かれている金額)と実際の購入代金(払込金額と呼びます)に差があるケースでの出題がほとんどです。

ポイント

満期保有目的の債券のおすすめの考え方は、"貸付金"のように考えることです。

つまり本問の場合、5年後に50,000円の返ってくる貸付金なんだけれども、当期首現在貸したお金は47,500円だけという状況ですね。

それではなぜ貸した金額と返ってくる金額が異なるのでしょうか?少し難しい考え方なので、飛ばしてもOKですが、

例えば、現時点における市場の金利が本問例題の2%よりも高い4%ぐらいだったとしましょうか、つまりイメージしやすいところでいうと、普通預金の利息が4%つくなんて世界を想定してください(天国ですね)

このとき、社債を買っても2%としか利息がつかないわけですから、当然誰も買わないですよね。なので、払込金額を下げることによって実質的な利回りを上げているんですね。

数値例で言うならば、47,500円貸して、50,000返ってくるということはこの差額の2,500円部分も利息のように捉える事ができますね。よってこの額面金額と払込金額のズレというのは、金利(利息)を調整しているもの、なんです。

なので、仕訳としては以下のようになります。

そして、決算整理で行う償却原価法という話につながっていきます。

(当然クーポン利息の受け取りもありますね。仕訳は以下になります。)

クーポン利息の計算方法は、額面金額 ✕ 利率になります。

満期保有目的の債券の期末評価(償却原価法)

簿記2級では償却原価法の処理方法は定額法のみの出題となっていますので複雑そうに見えて実は単純です。

償却原価法とは、先程見た債券の払込金額(47,500)と額面金額(50,000)のズレ(2,500)を満期日に向かって調整していく処理になります。

償還期間は5年ですので、2,500のズレを5年かけて解消していくような仕訳を行います。

ポイント

この処理を行うことで、5年後に50,000円返って来るという事実を会計上反映させることができますし、利息の調整として利息が発生していることも表現できる仕訳になります。

仕訳は以下のような仕訳になります。

そして、期末時価評価については行いません。

なぜならばこちらも当該満期保有目的の債券の性格に立ち戻って考えてみてほしいのですが、

売らないで満期まで持っとく債券

という性格である以上、期末の時価で評価したとしてもその金額で売るわけではないので意味がないからです。

満期保有目的の債券の期中売却

さて、一番苦手としている人が多い論点かと思います。

なぜならば端数利息の処理が絡むからですね。まず端数利息は一旦置いておいて、債券の取得時もしくは当期首から期中売却時までの期間の償却利息を計上して上げる必要があります。つまり、保有期間分の償却原価法を適用する必要があります。

例題

X1年4月1日(前期首)に、満期保有する目的で、A社の発行する社債(額面50,000円:償還期間5年:利率年2%)を額面100円につき95円で購入した。

当期x2年9月30日に、当該社債を47,000円(裸相場)で売却した。

ではこのような例題を使って見ていきましょう。端数利息と償却利息は明確に区別できるので、まずは償却原価法を適用する方を考えていきましょう。

当該社債は取得してから2年目ですので、前期分の償却は前期末において適切に処理されています。

よって当期首から売却までの保有期間について償却原価法を適用してあげる必要があります。1年分の償却が500ですので、その半分の250が売却までの償却利息になります。

よって売却時点の償却原価は48,250になりますので以下の仕訳になります。

これだけではなく、別途端数利息の仕訳をしてあげる必要があります。簡単な覚え方として、売却するときには端数利息はもらう側、取得するときには端数利息は払う側になります。

ポイント

つまり、当該債券自体の売却から得られるお金や取得のために支出するお金と同じ向きで端数利息によるお金が増減します。

クーポン利息はその紙という性質上、1年毎でしか受け取ることができないため、保有期間に応じた利息を受け取る権利を主張できます。これが端数利息というものになります。

本例題だと、前回の利払い日である前期末以降6ヶ月保有した後に売却しているわけですから、6ヶ月分の利息は受け取る権利があります。

よって額面金額に利率をかけた金額の6/12だけ端数利息を受け取ることができます。

子会社・関連会社株式の会計処理

こちらは簡単な処理ですね。

子会社・関連会社株式の売却

基本的に売買目的有価証券の売却と同様の処理という理解でOKです。

1点注意点を挙げるとするならば、子会社・関連会社株式は売買目的有価証券と異なり通常売却されることが想定されていないことから、売却損及び売却益は損益計算書上特別利益(特別損失)となります。

子会社・関連会社株式の期末評価

期末評価は、そもそもの子会社・関連会社株式の性格に立ち返って考えてみましょう。性格は、

会社を支配もしくは影響を及ぼすためにもつ株式

ですから、期末時点の時価に意味はないですね。そのため期末評価は行わず、取得原価のままとするというのが結論になります。

その他有価証券の会計処理

株式のケースと債券のケースで大きく取り扱いが変わるので分けて解説していきます。

その他有価証券(株式)

その他有価証券(株式)の売却

基本的に考え方は売買目的有価証券と同様でOKです。

勘定科目だけ変わるので仕訳だけ示しておきます。

その他有価証券(株式)の期末評価

その他有価証券の基本的な考え方に立ち返ると、

すぐには売らないんだけれども、いつかは売る有価証券

でしたね。なので、いつかは売るという点で、各期末時点の時価は把握したい。しかしその時価の変動をP/Lに損益計上するのも悩ましい。そんな性格なのです。

よって、時価評価はするけれど、時価の変動をP/Lに計上せず、別途"その他有価証券評価差額金"という純資産科目で示します。

こうすることによって、有価証券は時価で評価できるし、かつ、損益を期末評価において発生させないことができます。

例題

当社は、その他の保有目的で取得した取得原価10,000円の株式を期末においても保有している。

なお、当期末における当該株式の時価は9,000円であった。

仕訳としては、以下の形になります。

その他有価証券(債券)

その他有価証券(債券)の取得

満期保有目的の債券と同様の形式での資料が与えられますので、満期保有目的の債券の取得を参照してください。

その他有価証券(債券)の期末評価

その他有価証券であることには代わりはないので、基本的には株式と同様帳簿価額と時価との差額を期末において"その他有価証券評価差額金"にしますが、債券であることから、まず償却原価法を適用した後の帳簿価額(償却原価と呼ばれます)と時価との差額に着目します。

つまり、

注意

①償却原価法を適用する→②時価評価する

という流れになります。

例題

X1年4月1日(当期首)に、その他の保有目的で、A社の発行する社債(額面50,000円:償還期間5年:利率年2%)を額面100円につき95円で購入した。決算整理仕訳を示しなさい。

なお、当該社債の時価はX2年3月31(当期末)において、49,000円であった。

まず、償却原価法を適用しましょう。額面(つまり返ってくるときの金額)50,000円の社債を、47,500円で購入していますので、2,500円の差がありますね。その差を償還期間の5年で調整していくイメージです。以下の仕訳になります。

これによって現時点の投資有価証券の帳簿価額(償却原価)は、当初取得した金額の47,500円+上記の仕訳の償却分の500円=48,000になっています。この帳簿価額を時価評価します。仕訳としては以下のようになります。

その他有価証券(共通)

その他有価証券の期末評価において計上した"その他有価証券評価差額金"については、翌期首に洗替、つまりなかったことにします。

例題

当社は、その他の保有目的で取得した取得原価10,000円の株式を期末においても保有している。

なお、当期末における当該株式の時価は9,000円であった。翌期首の仕訳を答えなさい。

当期末におこなう仕訳は以下でしたが、

これを取り消す。つまり以下の反対仕訳を翌期首に行います。

この処理によって、その他有価証券の帳簿価額は取得原価もしくは償却原価に戻されることになります。

簿記2級における有価証券まとめ

以上が簿記2級で問われる有価証券の論点になります。

冒頭のそれぞれの保有目的の考え方を押さえることで期末評価に繋がりますので必ずイメージを持っておきましょう。

この記事のまとめ

  • 売買目的有価証券はすぐ売る
  • 満期保有目的の債券は満期まで持っておく
  • 子会社・関連会社株式は支配や影響力を及ぼすため
  • その他はいつかは売るけどすぐは売らない

日商簿記2級は近年難化傾向にありますが、その価値は高まっているとも言えます。

就職活動の一環であったり、様々な目的で学習されているかと思います。本記事が皆様の一助になれば幸いです。

 

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